rainfiction

アマチュア映画監督 雨傘裕介の世に出ない日々です。

世界のすべてのオペラシティ~3年越しの小沢健二「東京の街が奏でる」レポート~

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再びこの日が来ようとは。

そう、この僕が、小沢健二について書く日。

 

2010年、アホほど長い文章を書き、あまつさえブログなんぞに公開し、ちょっと反応があったからといって、一人で読み返してニマニマしたり、翻って文才の無さを反省したり、とにかく気持ち悪いことをして過ごしていたこの僕が、再び小沢健二について語ろうとは。

 

 

2012年3月に小沢健二のライブ『東京の街が奏でる』が開催されて以来、早3年が経過した。

 

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君は小沢健二の未発表曲「甘夏組曲」の素晴らしさを知っているのか

2015年も3月を迎えました。

同年2月末、深夜残業に疲れてタクシー待ちをしていたところ、iPodから懐かしい曲が流れてきた。

小沢健二の未発表曲「甘夏組曲」。

春の幕開けにふさわしい、強く冷たい風が吹いた夜更け、薄曇りの夜空には、わずかに靄がかかって、冬空とは違った様子を見せていた。
そんなシチュエーションに「甘夏組曲」はぴったりとハマったわけで。



ライブ(レビュー96)で披露されたものの、音源としては発表されておらず、ネット上では禁断の観客による録音素材が出回っている同曲。かたや同ライブで「ダイヤモンド組曲」と題されて発表されたもう一つの新曲は、「夢が夢なら」へ改題、アレンジと歌詞を変えて発表されている。両者の間にどのような扱いの違いがあったかは不明だが、個人的には「夢が夢なら」に負けず劣らずの名曲だと思っている。

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iTunesで買える小沢健二元ネタリスト 〜「LIFE」発売20周年〜

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20年前の1994年、8月31日。

その日、あなたは何をしていただろう。

 

今よりも若く、今よりも一日が長く感じれていた時節だったはずだ。

20年前の8月31日は、すでに忘れてしまった一日かもしれない。取るに足らない普通の日。いつもの一日と変わらずに過ぎていった夏の一日。

 

だけど、僕はその日を覚えている。

そうです。

小沢健二の「LIFE」を一日中聴いていたのです。 

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はてなブログへ移行

はてなダイアリーからはてなブログへ移行。

思い立って、でもないが、近日中に公開したい記事に向いた機能が整備されていたので。

 

旧ブログ(はてなダイアリー

nasty lodge

 

屋号も変えたった。

はてなブログ、思ったより使いやすいね。

「SF映画ベストテン」に参加します!

SF映画ベストテン」に参加します!
初めて「男の魂に火をつけろ!」のベストテン企画に参加や!

  1. マトリックス」(監督:ラリー・ウォシャウスキー/アンディ・ウォシャウスキー
  2. バック・トゥ・ザ・フューチャー」(監督:ロバート・ゼメキス
  3. 機動警察パトレイバー2 the Movie」(監督:押井守
  4. うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(監督:押井守
  5. 「御先祖様万々歳」(監督:押井守
  6. 惑星ソラリス」(監督:アンドレイ・タルコフスキー
  7. 第9地区」(監督:ニール・ブロムガンプ)
  8. E.T.」(監督:スティーブン・スピルバーグ
  9. 「WALL-E」(監督:アンドリュー・スタントン
  10. 猿の惑星 創世記」( 監督:ルパート・ワイアット

最終日の投稿ですみません…!

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異人との夏−「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」−

「劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を鑑賞。


チケット買うときには「あの日見た花のなんちゃら1枚」と言いました。


さて、劇場版、と名がつく作品は、いつからか「劇場版(笑)」と揶揄される風潮がすっかり出来上がってしまい(例:劇場版「スシ王子」)、かつては「劇場版=TVシリーズで人気を博した作品」であったものが、今では「劇場版=とにかくなんか売上を少しでも伸ばすための約束された手法」となっている。「祭り」としての「劇場版」は、製作される作品のほんの一握りと言えよう。


僕自身、劇場版と題された作品をわざわざ観に行くには、よほどTVシリーズを堪能したか、あるいは単体作品として評価が高いか、それなりの条件がなければならなかった。TVシリーズの劇場版では「涼宮ハルヒの消失」を最後に観ていない。
※「踊るFINAL」や「真夏の方程式」は観たが、これはまあ、すでに劇場映画シリーズとして確立しているから除外。


アニメの劇場版といえば、古くは機動戦士ガンダム宇宙戦艦ヤマト、そして我ら世代の金字塔「旧エヴァ劇場版」に代表されるように、TVシリーズ総集編からの新作ストーリーでシリーズを補完し、真のラストで完結する、というひとつの伝統芸能だ。しかもそれで前後編、三部作などザラである。観るものには大きな期待と満足を与える一方、観ないものには「不完全な視聴者」というレッテルを貼るというえげつない商法。
ゆえにアニメ劇場版を観るものは、製作者側の姿勢を常に疑い、「これは本当に観る価値のある映画なのか」と自問しつつも、結局はTVシリーズに対する熱意だけで観てしまう、という一つの情けないプロセスを経ることになる。それもまた世代を超えて受け継がれる伝統である。


では、「劇場版あの花」は劇場版(笑)であったかというと、そうでもなかった。
よくできた総集編ではあるが、ひとつの新作として、丁寧に作られていた。

以下ネタバレあり。

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ふたつとない作家性−「宝石の国」−

市川春子宝石の国」第一巻を読了。



個人的に、手塚治虫クラスの書き手だと勝手に認識している市川春子の最新作にして、はじめての連載作品。
デビュー作品集『虫と歌』が第14回手塚治虫文化賞新生賞を受賞したからってわけでもないが。


話運び、ファンタジーとSFの境目にひっそりとはまるようなジャンルレスなモチーフ、そしてシンプルだが美しい絵。


どれをとっても独特で、「こんな漫画は読んだことがない」と思わせられる作品たちである。


これまでの作品では、必ず人ならざるもの、あるいは人と何かの性質が合わさった生物が必ず登場する。その「人ならざる者」の性質がドラマを生み、不思議な感情を沸き起こす。
偏った愛と嗜好、あるいはフェティッシュ。作者本人がそれを何気なく作品に落とし込み、美しく作品を満たしていく。


そんな作品を書く作家が、ついに連載を開始。読まない訳がない。ついでに単行本も買わない訳がない。

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