rainfiction

アマチュア映画監督 雨傘裕介の世に出ない日々です。

ザ・ワールド・イズ・ユアーズ

アメリカ合衆国大統領はいつだって世界の暫定キングですよ」


アメリカ合衆国大統領の姿を見る度、「ザ・ワールド・イズ・マイン」の上記の台詞を思い出す。


前回の大統領選の時はまだ大学生で「ゴアでいいのか?」とか「ブッシュって前もやってなかった?再任?」とかしょうもない議論を交わしていた覚えがある。未熟であった。それでいて、具体性のない未来を信じたりもしていた。


現在は瞬時に過去となり、未来との極小の接点のみが現在であり、未来は須く未知であり、だからこそ希望が生まれる。


派遣=生き方、とされつつある言説。
派遣というサービスを労働形態として選び取った派遣社員
生き方を選びとったわけではない。
未来は斯様にパッケージとして選び取られるものではない。


前回の大統領選の時はまだ大学生で、パッケージ化された未来が存在しているのかも、と錯覚していた。例えばフリーター、例えば正社員、例えば派遣。大統領選の世間話をした女の子は、当時まだ珍しかった派遣を大学生ながらやっていたなあ。そういえば。


パッケージ化された未来などどこにもない。
けれど僕らは未来に対して、パッケージとしての未来像を抱く。
「お嫁さん」「警察官」「サッカー選手」。
大人になったら何になる?とは問われても、大人になったらどう生きる?とは問われなかったし、問うても答えを持てない時代が必ずある。混沌とイメージと、不確定要素こそが未来の本質であるからだ。


政権も労働形態も、提供されるいかなるサービスも、未来においては不確定要素を含んだ、完パケではない代物だ。
僕らはそれを選び取る。暫定的に。


アメリカの新たな大統領。
それもまた未来。
約束という希望を、言葉という未来像を、行動という極小地点での現在進行形のエネルギーを、世界中がイメージする希有な瞬間が訪れる。僕らは未熟であると知る。
パッケージ化された未来が封を開けられることに、僕らはそろそろ慣れてきている。中に希望が残るのか。あるいは深淵か。
僕らは未熟であると知れ。


世界はあなたのものだ。