rainfiction

アマチュア映画監督 雨傘裕介の世に出ない日々です。

愛ゆえに傑作―『宇宙人ポール』―

今年、初めて劇場で観た映画は『宇宙人ポール』。

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前評判が高すぎたため、自然と期待値も高まり、スピルバーグ映画へのオマージュ満載、という意味では、スピルバーグ御大ご自身の『インディ・ジョーンズクリスタル・スカルの王国』、オマージュどころか御大が製作総指揮を務めた『SUPER8』と同じくらいの期待値をマークしたのであった。


それぞれ表層的モチーフが共通しており、スピ公魂は今も昔も『未知との遭遇』というモチーフにおいて受け継がれているのを実感しつつ、今回は純度100%のコメディと聞いて、笑いに行ったようなもんです。


結論。
俺が映画に求めているものはコレである。
つまり俺が観たい映画は『宇宙人ポール』である。




『スーパーバッド 童貞ウォーズ』は未見であるため、グレッグ・モットーラ監督の手腕について比較対象を持たないのだが、今作はマジでスゴイ。間が完璧である。スカシも完璧である。大笑いである。


サイモン・ペッグニック・フロストは脚本を書き上げるためにロケ地を巡ったとのことだが、コンセプトがハッキリと「宇宙人映画・スピルバーグ映画のオマージュ」と決まっていたからこそ、アホほどのアイディアを得たであろうことは想像に難くない。



※おなじみのコンビ。見るだけで笑える。


オマージュとは愛である。原意どおり敬意である。
ショーン・オブ・ザ・デッド』しかり『ホット・ファズ』しかり、ジャンルの最巨匠、最高傑作たちに敬意を払った上で、より面白い映画を!と、あらゆる愛を注ぎ込む彼らの作品群に震えないわけにはいかぬ。笑わないわけにはいかぬ。そしてまた、新たな愛が生まれなければならぬ。


失敗するケースも、というか、うまくいくケースのほうが希少だとは思うのだけれど、自分の愛がどこにあって、何を好きで、どう表明すべきかを知って、世に表せるのは、愛の大きさ故だろう。


「ウィークエンドシャッフル」の「シネマハスラー」で、宇多丸氏が「ポール(というキャラ)は俺たちが自慢されたいアメリカを体現している」と言っていたが、まさにそのとおり。下品で粗野だが、大らかで、ユーモアに溢れ、苦難を笑い、突き進む。


僕が子供の頃に観たアメリカの映画は、今見るとバカっぽく、大味で、楽しめて、説教臭くないものばかりだった。好きな映画のラインナップは、大抵、映画館で父と母が声を上げて笑うような作品たちだった。


僕も一緒になって笑えるユーモアもあれば、「なんで笑ってるんだろう?」と不思議になる笑いもあった(今思えば、あれらは下ネタだったんだろう)。


そんな笑いの時間が過ぎて、クライマックス。
主人公たちの活躍。少しはヒネりの効いた結末。


そんな映画が観たいのだ。今も昔も。


同じことを思う人達は、この世界に山ほど居て、そんな人たちのトップクラスが、『宇宙人ポール』の作り手たちであるはずだ。


決して美談ではない。皮肉も悪ノリもたっぷり。下ネタも。
「ちょ…あんまりだろ…」って結末を迎えるキャラもいる。
話の流れも、ちょこちょこ辻褄があってない。


だが楽しめることは確実に保証できる。
とにかくサイコーだ!


サイコーな映画が少なくなった今こそ、新たに子供に見せるべき映画だと、僕は断言できるぜ!(自己責任でお願いします)


・個人的なツボ
 1:パダ・ワン少年の一撃
 2:爆破
 3:やっぱり爆破
 4:アメージング・グレイス
 5:ベスト・キッド

『インディー・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』や『SUPER8』との比較について語りたかったが、そうはならなかった。


1つだけ言うならば、これら先行作品との大きな違いは「ユーモア」であると思う。

コメディというジャンルだから、ではなくて、やっぱり「ユーモア」には必然性が必要だってこと。
笑いは散りばめるものではなくて、笑わせることが、物語の推進力になるってこと。


SUPER8』にはそれがなくて、『宇宙人ポール』にはそれがある。


あえて言うならそんな感じ。


早くBlu-ray出るといいな。